交通事故にあった方からの臓器移植の可能性について

全国には、臓器移植を受けなければ助からない病気の方がたくさんいらっしゃいます。一方で、健康な方でも誰でも交通事故に遭う可能性があり、不幸にも命が助からない場合、事故の状況や、本人があらかじめ示した意思によっては、事故にあった方が臓器提供を行い、病気で臓器移植を待つ方の命を救う事があります。

この記事では、臓器移植とはどのような医療なのか、また交通事故にあった方の臓器提供の可能性についてお伝えします。

誰にでも起こる交通事故

交通事故は、誰にでも起こる可能性があります。子供から老人まで、気をつけていても避けられない事故があります。警察庁が発表している交通事故に関する報告書によると、現在、交通事故の死亡者数で最も多いのは65歳以上の高齢者ですが、未成年者、子供を含め、60歳以下で亡くなる方も全体の半数近くを占めていて、その数は1000人を超えています。

つまりまだ若く、健康な体を持つ世代の方々が、不幸にして交通事故で亡くなってしまっていることになります。

交通事故で助からなかった場合の臓器提供について

交通事故での死亡者数は年々減ってきてはいますが、それでも毎年3000人以上の方が交通事故によって亡くなり、そのうち半数近くがまだまだ若い60歳以下の方々です。

亡くなった方のご家族や関係者は、二度と戻らない命に悲しみますが、時として、交通事故で亡くなった方が別の命を救う可能性があります。本人が臓器提供の意思を示している場合、事故の状況によっては、損傷していない健康な臓器を提供し、臓器移植を待っている他の方の命につなげる事ができます。

ただし、臓器提供のためには、健康な時からあらかじめ臓器提供の意思を家族とも相談し、意思を表示しておかないと、いざ事故にあった時に臓器提供ができないことがあります。そのために、あらかじめ臓器提供意思表示をしておく方法がいくつかあります。

臓器提供の意思表示について

臓器提供の意思表示は、大きく3つの方法があります。

1インターネットによる意思登録

2健康保険証・運転免許証などへの意思表示欄への記入

3臓器提供意思表示カードへの記入本人の書面による意思表示は15歳以上から可能です。15歳未満の臓器提供についても、本人の意思が不明な場合は、家族の承諾により提供が可能です。また、臓器提供の意思だけでなく、逆に「臓器を提供しない」という意思表示も可能で、その場合家族よりも本人の意思表示が優先されます。

臓器を提供する場合の条件(脳死後か心停止後か)や、提供したくない臓器の指定、親族優先提供の意思など、こまかく提供の意思を表明することができます。また、意思の変更についても常に可能です。交通事故にあった方のご家族は、混乱していて臓器提供の事まで頭が回らないことも多くあります。

そのため平時から、いざ自分の身に何かあった時にどうするかという意思を伝えておく必要があります。健康保険証や運転免許証は多くの方が常に持ち歩いているものなので、いざという時にも見つかりやすく、特別な手続きなく意思の表示ができるので、意思表示方法としてもっとも手軽な方法と言えます。

臓器移植とは、現状はどうなっているのか

臓器移植とは、病気などで臓器の機能が低下してしまった方に、健康な方の臓器を移植して、その機能を回復させることです。日本では臓器移植を希望している方は約14000人いらっしゃいますが、臓器提供の数は充分とは言えず、年間約400人しか移植を受けられていません。

まだまだ臓器提供が足りないので、移植を希望して待機する方の中には、移植を受ける前に亡くなってしまう方もいらっしゃいます。また、海外に比べ日本の提供者の数が少ないため、多額の費用をかけて海外での移植手術に踏み切る方もいます。

臓器移植は医療の力だけでは成り立たず、臓器を提供してくださる方の協力なしには成り立たない医療なのです。日本では臓器提供の意思表示に関する法律は、過去に厳しく条件が規制されており、脳死後の臓器提供が可能な臓器移植法が成立したのは1997年のこと、また本人の意思が不明でも家族の承諾があれば提供できるようになったのは、2010年からのことです。

法律が改正されたことで、臓器提供の数は増えてはいますが、希望者の数に対して全く足りていないのが現状です。

交通事故者からの臓器提供の事例

息子さんが交通事故で脳死状態になり、臓器に損傷がなく、本人が臓器提供意思カードに提供の意思を記入していたため、臓器提供を決めた親御さんがいらっしゃいます。「息子は亡くなってしまうけれども、息子の意思を尊重したいし、他の人の中でも生き続けて欲しい」という願いを込めて提供を決めた親御さんは語りました。

若くして交通事故で突然亡くなることは不幸ですが、命を他の人につなぐことができる唯一の方法が臓器移植であるとも言えます。

「交通事故の規模と被害者の死亡率の関係」

臓器提供者の家族へのケアも大切

臓器提供者の家族は、身内の死に打ちひしがれています。その中で臓器提供を決めるということは、大変つらいことです。そのため、臓器提供にあたっては、移植コーディネーターが家族に寄り添い、丁寧に説明をし、本人の意思についての確認や、書類の作成や連絡業務、実際の臓器の移送に関する手続きなどを行います。

移植は提供から時間をおかずに行わなければいけないため、提供者と移植者の間を調整するコーディネーターの仕事は非常に重要です。

また、調整と同じように大切なのは臓器提供者へのケアです。移植手術の結果やその後の経過も臓器提供者に伝え、その後も継続的に家族のための精神的なケアも行います。

一人でも多くの命を救うために

交通事故は誰にでも起こりうることです。自分自身が事故にあう場合もありますし、大切な人や家族が事故にあう場合もあります。事故に限らず、様々な要因で脳死や心停止が起こった時にどんな選択肢があるのか、亡くなる命を他の方につなぐ方法があるのか、考えたことがある方もいらっしゃると思います。

けれどまだ自分のこととして考える人は少なく、臓器提供者はまだまだ足りていません。臓器提供意思表示の方法についてまだ十分に知られていないことが、提供者が少ない原因の一つでもあります。まずは一人一人が自分のこととして考え、家族や身近な人たちと話題にしてみる、一緒に考えてみる、そしてしっかりと考えた上で臓器提供するのかしないのかを決め、意思を表示することが必要なのではないでしょうか。

一人一人が話題にして考えていくことで、少しずつ意思提供表示が身近になり、臓器提供者が増えることにつながります。そのことが移植を待ち続ける方々の命を救うことになるのではないでしょうか。